家族信託(民事信託)の弊社の取り扱いについて

 最近話題になってきている、新しい財産管理、財産承継の手法である『家族信託』業務に関して、弊社は時代の波が来る数年前から相続対策の一手段として推進していたため、四国地域の税理士事務所ではトップクラスの事案対応・相談数量・セミナー講演件数となっています。
 
 特に家族信託は専門家の中でも対応できる事務所が希少という特殊分野です。各士業の横断的な専門分野の知識が必要なため、弁護士・司法書士・行政書士・税理士等の士業間連携で最速のレスポンスで、お客様のご希望を達成するために同席等でご対応いたします。家族信託では金融機関様や不動産業者様との連携も不可欠となるため、全体の連携を含めスキームの一環として対応しております。

 また、複数の専門家で対応し家族信託の問題を解決したいという想いで設立した、『一般社団法人 よつば香川民事信託推進協議会』の創立メンバーであり理事として、日々、家族信託の研究と広報活動に励んでいます。

 家族信託について、興味がある、相談したい場合は、まずは弊社にお気軽にご連絡ください。また、要望がある方はセミナー等も優先してご連絡いたします。


家族信託(民事信託)について

家族信託の概要

  

 家族信託とは、『資産を持つ人(委託者)』が、『信頼のできる家族(受託者)』に『託したい資産(信託財産)』を法的に託して、託された方が円滑な財産の管理・処分・承継等を実現し、そこから生まれる利益等を『資産を持つ人が設定した一定の経済的な利益を受ける人(受益者)』に配分する、財産管理の新たな手法です。

 つまり、『信託』とは、【誰かに信じて自分の財産を託す】という事です。
 
 また、『家族信託(民事信託)』は、信じて託す先は、自身の信頼できるご家族です。それに対して、『商事信託』とは、信託業法の下で、信託銀行や信託会社等が一定の報酬をいただいて管理等を行うものです。『家族信託(民事信託)』と『商事信託』は、異なるものですのでご注意ください。


※『民事信託』と『家族信託』は、細やかな違いはありますが、一般的に用語としてほぼ同義で利用されています。おおよそ、民事信託をご家族でされる場合に家族信託と区分しており、このHPでは、分かり易く『家族信託』という用語で以後は統一していきたいと思います。


『家族信託(民事信託)』と『商事信託』の違い


家族信託(民事信託)

商事信託

信託の内容国の許可を受けていない親族の受託者(又は同族法人等受託者)が、有償・無償の取り決めを行い、親族等の財産を、管理・処分・運用等を行う信託国の許可を受けた受託者である信託会社・信託銀行等が、信託業法の下に業務として一定の報酬を得て、お客様の財産を、管理・処分・運用等を行う信託
主要なメリット

・信託の管理等を家族等が行うため、信託の管理等に伴う報酬を有償・無償等を自由設計できるためランニングコスト等の費用負担が少ない

・商事信託で対応が難しい『不動産』・『同族会社株式』も、信託に組み込んで財産管理・財産承継の計画を立てることも可能

・資産家以外の、基本的に相続税額が発生しない様な一般家庭の財産管理問題まで対応が可能で、全世帯的に活用が可能

・委託者と受託者のニーズに柔軟に対応した内容で契約を設計することが可能

・受託者が運用のプロであり、家族等の受託者業務の負担が少ない

・信頼のできる家族等が受託者にいない場合でも業者に委託して運用が可能になる。

・特定贈与信託等の贈与税の非課税規定が活用できる。

主要なデメリット

・受託者が運用のプロではない親族であるため、受託者の業務負担が発生し、また、適切な運用が行われているかが確認できるような信託契約の設計・受託者業務の情報共有・仕組みづくりが必要になる。

・そもそも自分に代わり管理等を行ってもらえる信頼できる家族等が必要になる。

・信託の管理等を信託銀行等の業者が行うため、信託の管理等に伴う設計・ランニングコスト等の報酬が、資産状況に応じて多額にかかる場合がある

・主に信託できる財産が『金銭等』に制限されることが多い
・一定の資産家以外の大多数の一般家庭の信託を対象としていない

・信託契約の柔軟な対応は難しい面がある


 セミナーや相談の対応時に、「信託銀行もやってますよね。信託銀行の信託とは何が違うんですか?」「銀行等が提供している遺言信託サービスと何が違うんですか?」「投資信託と何が違うんですか?」という質問をよくいただきます。

 1つ目の、「信託銀行との信託とは何が違うか?」に関しては、上記の『家族信託と商事信託の違い』の表で対比しています。最も大きく違うのは、財産の信託を受けて運用等を行う受託者が『家族』か『業者』の違いになります。

 2つ目の「金融機関等の遺言信託サービスと何が違うか?」に関しては、『遺言信託』の様な金融機関が行うサービス名に『信託』という名前が付くサービスは、実際は、①遺言作成サービス:財産台帳の作成、アドバイス等、② 遺言書の信託: 遺言書の作成のアドバイス、遺言書の保管、遺言執行等、③ 遺産整理業務:遺産分割協議等のアドバイス、相続財産調査等の手続き、といった「遺言作成・相続手続き業務」が商品化されたものであり、『家族信託』とは単に名前が似ている異なるサービスになります。

 3つ目の「投資信託とは何が違うのか?」に関しては、『投資信託』とは、一般の投資家から集めたお金を運用の専門家が、株式や債券などに投資・運用し、その運用成果が一般の投資家の投資額に応じて各人に分配される仕組みの金融商品です。『家族信託』は複数の投資家から財産の委託を受けて利益を生み出し還元する仕組みではなく、家族等から財産の信託を受けて財産管理等を行う仕組みであり、根本的な趣旨が異なります。


 おさらいですが、『家族信託(民事信託)』は、信じて託す先は、自身の信頼できるご家族です。それに対して、『商事信託』とは、信託業法の下で、信託銀行や信託会社等が一定の報酬をいただいて管理等を行うものです。
 『家族信託(民事信託)』と『商事信託』は、異なるものですのでご注意ください。


 家族信託を活用する代表的なメリット ① 【認知症対策】認知症後の財産の柔軟な運用等が可能に


 家族信託を活用する代表的なメリット ①【認知症対策】

 現在、利用が進んでいる法定後見制度は、判断能力が減退した方の財産管理・身上監護、不利益な契約を締結するリスクが無くなる等の被後見人の生活を守るための様々なメリットがあります。しかし、後見人は財産の運用のプロでは無いですし、裁判所の管理下に置かれているため、財産の管理・運用がどうしても硬直的になりがちです。

 また、親族を後見人候補者として申し立てて、後見人になってほしいという方も多いですが、資産を一定以上お持ちの方に関しては、裁判所から司法書士等の専門家が後見人に選任されることが多くあります。香川県の財産水準でいうと1,000万円~1,500万円程度以上の財産所有者から、専門家が選任されることが多くなります。

 そこで、家族信託を活用することで、一定の管理・運用等の要望のある資産に関しては委託者が受託者に信託財産として託すことができます。こうすることで、信託財産以外の委託者の固有の財産に関しては将来的に認知症等になった場合には専門家等の後見人が管理等を行うことになりますが、信託契約により定めた信託財産に関しては信頼のおける依頼者希望の受託者に管理・運用・処分をしてもらう事が可能になります。

 家族信託をご健全なうちから委託者と受託者間で結んでおくことで、委託者の認知症後も指定した財産の柔軟な管理運用等が可能になります。


 家族信託を活用する代表的なメリット ② 【受益者連続】遺言ではできなかったことが可能に


 家族信託を活用する代表的なメリット ②【受益者連続】

 民法では3大原則のうちの一つに「所有権絶対の原則」というものがあります。これは、自己の所有財産を何人からも拘束を受けず、侵害するあらゆる他人に対して主張することができる完全な支配権であり、自由に使用・収益・処分できるという原則です。いいかえると、自分にしか自分の財産の次の承継者を決めることはできないという事になります。ですから、現在の財産の所有者は、財産の以前の所有者の制約を受けることはありません。

 しかし、家族信託では、財産の所有権を債権に転換する機能があり、委託者が所有する財産の行き先を何段階にも指定することが可能になり、信託財産に設定した信託財産について、「私(父)が死んだら子供Aに財産Xを相続させる。また、子供Aが死んだら孫Bに財産Xを承継させる。」といったことが可能になります。つまり、遺言の機能も持たせつつ2次相続以降の資産の承継も実現することができます。
 
 遺言では対応が不可能なニーズを補う事ができ、従来の承継方法の幅を広げる事が可能になります。ただし、税務・法務のリスク等が設計によっては多分にあるため、専門家の支援が重要になります。

 家族信託を活用する代表的なメリット ③ 【契約内容の変更制限】変更制限付きの遺言代用が可能に


 家族信託を活用する代表的なメリット ③【契約内容の変更制限】変更制限付きの遺言代用が可能に

 自分の財産の分割先を決めておくために、遺言を作成したほうが良いという話は様々なところで聞くことがあると思います。しかし、遺言を作成していても、テレビやニュースで相続人間の遺言のトラブルをお聞きすることがあると思います。

 そのトラブル発生の原因の一つは、「遺言はいつでも撤回や書き換えが可能」というところになります。これは、
生前に口頭で言っていた話と、実際に遺言書で書かれていた内容が異なる場合や、遺言書の書き換えが頻繁に起きている場合等に争いが起きることがあります。ということは、遺言を持ってしても、その時点ごとの財産所有者の意思が固まっていると言っても、各推定相続人の思うところの将来の遺産の行き先は不安定な状態であり、将来のもめごとが無いとは言えないということです。
 
 家族信託を活用すると「遺言」と同様の機能をもたせるとともに、さらに「信託内容の変更の制限」という機能を持たせることができます。財産を託す委託者が単独で変更ができない仕組みを作る事で、各推定相続人の不安を解消する事が可能になります。
 
 具体的には信託の変更は信託法第149条に、原則は
委託者・受託者・受益者の合意で変更が可能で、各項に細かい変更のルールは適宜ありますが、結局は別段の定めで変更のルールを決めることができると条文に定めがあります。 

 このように、家族信託で「遺言の機能」と「遺言の書き換えトラブル等」のリスクを回避することが可能になります。
 

 【家族信託】と【遺言】の違い  


 【家族信託】と【遺言】の違い

 遺言では、ご本人が無くなった後の財産・債務の行き先を決め、自筆証書遺言や公正証書遺言等の方法で作成することになります。その効果は、ご本人の亡くなった後に遺言の内容に基づき、指定されている相続人等に財産・債務が引き継がれることになります。

 一方、家族信託では前述したように、その設計内容により遺言のような行き先を指定する効果も持たせつつ、その次の行き先も決めることもできます。一見すると、家族信託をしておけば遺言は不要なのではないかと疑問を持たれる方がいます。しかし、家族信託も万能ではありません。

 まず、家族信託では信託財産とすることができる財産の種類が限定されています。そのため、全財産のうち、現金や不動産といった一部の財産のみを信託財産に組み込んで家族信託を設計することが主になります。反対に、遺言では被相続人の財産・債務の全部に対して行き先を設定することができるため、対象とする財産の範囲が異なります。

 また、家族信託は生前から管理等その効果を発揮することができますが、遺言は死亡後に初めて効力を発揮します。 

 このように、家族信託と遺言は、それぞれの特徴があるためケースに応じて使い分けたり、また、両方を併用して財産管理や相続の対策を行うことも多くあります。


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